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防音ドアの設計 その1

Twitter(X)でも話題にあがったので、弊プロジェクトのドアの設計について書いてみたいと思います。Twitter(X)の連ツイで書こうとも思いましたが、一発で適切な文章が書ける自信がなかったので、後で編集できるようにブログで書きます。編集するかもしれません。たぶんする。


防音室をつくるときに、音がいちばん漏れる可能性があるのが開口部、つまり

 ① ドア

 ② 通線穴

 ③ 換気口

 ④ (弊プロジェクトの防音室にはまだないけど)窓

の4つかと思います。


このうち、②の通線穴については以前まとめたものがありますのでそちらをご覧ください。



③の換気口についてはまた別の機会にまとめます。④の窓は遮音性を考えるとないほうがいいので今は作っていません。作りたい人は自分で考えてね。


さて本題の①。ドアの設計について。


ドアというのは、大きく2つの部材でできています。


① ドア

② ドア枠


おうちのドアをよく見てもらうと、壁に直接ドアがついているわけではないですよね。必ず「ドア枠」といわれる、ドアが閉まったときの枠になる部分、あるいはドアが蝶番(丁番)で取り付けられている枠の部分がありますよね。それがドア枠です。


これから、ドアの開け閉めで動く板のことを「ドア」、枠を「ドア枠」、その二つを合わせて「ドア部」と呼ぶことにします。正しい呼称は知りませんが、ここではそういうことにしておきます。


ドアのどこから音が漏れるかというと、ドアの板を通る分もありますが、よりたくさん漏れるのはドアとドア枠のすき間からだ、というのはなんとなくわかると思います。つまり、ドア部からの音漏れを減らすには、ドアとドア枠のすき間をいかに減らすか、が重要だということです。


しかし、この「すき間を減らす」というのが難しい。ドアとドア枠のすき間がどういう位置関係にあるか、図示するとこうなります。




ここで、ドアとドア枠のすき間を埋められる場所は


 A ドアが当たっていく方向、ドアと戸当たりの間

 B ドアとドア枠の間


のどちらかですが、それぞれ


 A ドアを戸当たりに強く密着させる必要がある

 B ドアと擦れる


という欠点があります。


Aは、ピタッとくる寸法にすればいいんじゃないかと思う人もいると思いますが、ドアもドア枠も、完全な平面、完全な直線にはなってないんですよね。だいたいゆがんでいます。こういうものをつくるときは、そういうゆがみや誤差をいかにして処理するかが重要、というかそこがいちばんの設計のむずかしいところです。


そこで弊プロジェクトでは発想を転換して、


 「すき間は開くものだ」


という前提をおくことにしました。もう密着することを諦めます。そのうえで


 「すき間があっても音が漏れない」


という構造がないか考えました。そしてたどり着いた構造がこれです。



四角が左右に4つずつ並んでいますね。これはドアとドア枠それぞれ、長手方向に交互に角棒を貼り付けたものです。この棒を「リブ」と呼び、ドアの周辺4方向ともにこの構造になっています。


この構造を「かみ合いリブ構造」と呼ぶことにします。


片方を拡大するとこんな感じ。




黄色いほうがドア枠、オレンジ色がドアで、それぞれ同色の棒が貼りついています。図でもすき間があいているのがわかりますね。


その外側の灰色の四角はスポンジ材質のテープです。「エプトシーラー」という商品名です。


この構造が目指す機能を説明します。さらに拡大して寸法を示します。ちょっとゴチャゴチャするので少し離します。




これにより、ドアとドア枠がちゃんとくっついたとき、ドアとドア枠は12mmの棒をピタっと挟む位置関係となること、そのときのエプトシーラーのつぶれ量は3mmであることがわかると思います。


でも、ドアもドア枠も板なので、ゆがみます。そのゆがみによって、ちゃんとくっつかないこともあります。というかほとんどの板はゆがんでいるのでちゃんとはくっつきません。そうするとすき間があきますね。


そのときのようすはこうなります。




内部の音はすき間を通って外に出ようとしますが、すき間を通って出ると小さな部屋があり、そこからまたすき間を通って次の小さな部屋に……を4回繰り返す構造になっています。


これは車のマフラーがヒントになっています。



エンジンの排気音をマフラーなしで直接聞くとものすごい爆音ですが、マフラーがあると夜でも住宅街が通行できるレベルに落ちますよね。


音が小さなすき間を通って大きな空間に拡散すると音は小さくなります。それを繰り返すマフラーの構造を、ドア枠とドアが接触する部分に構成しました。


そして十分小さくなった音を、最後にエプトシーラーでチョッと止めてあげる。エプトシーラーのつぶし量が少ないですが、それでも十分効果があります。


この「かみ合いリブ構造」の欠点は、ドア枠が必然的に幅広になってしまうため、ドア寸法に対して開口部が小さくなってしまうことです。



しかしこれは個人用箱型防音室であって、ある程度の荷物と人が出入りできれば問題ないと割り切ることで、その欠点は問題ではない、とすることにします。


ドア枠についても説明します。


上の図のドア枠の板部分だけ抜き出すとこのような形状です。



ドア枠をつくろうとしたときに一番問題になるのは、


 「どうやってドア枠の直角を保持するか」


ということですが、このような幅広の板状の四辺とし、かつ、くり抜き部分の角を丸くする(これを「Rをつける」といいます)ことによって、


 ① 四隅を接合する工程が不要

 ② 角の直角が容易に保持でき、かつ剛性が非常に高い

 ③ くり抜き作業だけで作れる(ジグソー)


という特性を生むことができます。


さて、ドア枠とドアを密着させるためには、引き付けることのできるドアハンドルを使います。一般的には高価な「グレモンハンドル」を使いますが、これは1万円以上します。なので今回は、もっと安いハンドルを使います。ちょっと小さめですが、実用上は問題はありません。


 


このハンドルは中と外のハンドルを接続しなければなりませんので、鉄角棒を必要な量だけ切断して使います。





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